歯周病の外科的治療
重度歯周病では、痩せてしまった歯肉や骨を再生させるための手術などが必要となります。そのうち、当院で行っている代表的なものをご紹介します。
歯周ポケット掻爬(そうは)術
歯周ポケットの内部を切り開き、歯の根に近い部分にまでついている歯垢や歯石を取り除きます。その後、切り開いたところを縫合します。治療後は、歯周ポケットのない良好な状態に戻ります。
フラップ手術
歯肉を切り開き、歯を支えている骨を表出させてむき出しにします。そして、歯の根についた歯垢や歯石を取り除くと共に、溶けて崩れてしまった骨の表面を整えます。手術時間は通常1時間程度かかります。
GBR(骨再生誘導療法)
歯周病によって骨が溶け出してしまった部分に人工骨などを移植し、骨の再生を図ります。移植には、人工骨以外に、健康なあごの部分からとった自家骨を砕いて使う場合もあります。インプラント治療の際に、あごの骨量を増やすためにも使われている治療法です。
エムドゲイン
スウェーデンで開発された組織再生誘導材です。この薬剤の開発によって、以前は難しかったセメント質の再生が可能にとなりました。外科治療後にエムドゲインを塗布しておくことで、骨のセメント質が再生し、歯のぐらつきを抑えることができます。
光線力学療法
光に反応して活性化する物質を歯周ポケット内に注入し、そこに光を照射することで患部を殺菌する治療法です。歯周病の除菌治療には、通常は抗生物質を使いますが、繰り返すと耐性菌を作り出してしまうというリスクがあります。光線力学治療法なら耐性菌を作り出す心配がないので、体に優しい治療法だと言えます。
歯周病の進行具合と治療方法
歯周病の症状は、大まかに3段階に分類できます。ごく初期の歯周病なら、炎症の原因となっている歯垢や歯石を取り除くだけで症状が改善します。しかし重度まで進行してしまうと、外科的な治療が必要です。
初期歯周病
歯周ポケットに歯垢や歯石などが付着し始めた状態です。初期のうちは自覚症状がほとんどありません。歯垢や歯石を取り除き、ブラッシングをしっかり行うといった毎日のケアで症状は改善します。
中等度歯周病
歯周ポケットが深くなり、歯の根に近い部分に歯垢や歯石が付着し始めます。この段階になると、歯ぐきが腫れる、歯ぐきを押すと血や膿が出るといった症状が出てきます。中等度の治療法も、歯垢や歯石を取り除き、ブラッシングをしっかり行うといった毎日のケアです。
重度歯周病
この段階では歯ぐきが歯から剥がれ、歯を支える骨も溶けてしまっています。舌で触れただけで歯がぐらつく、といった症状も起きます。歯周ポケットの掃除や内服薬では治療できないので、歯ぐきや骨の再生手術が必要となります。
歯周病と全身疾患
歯周病を引き起こす細菌は、常にお口の中に存在しています。その細菌が炎症を起こした歯肉から体内に入り込むと、血管を伝わって全身に回ってしまいます。すると細菌の出す毒素が、糖尿病などの全身疾患に悪影響を及ぼすのです。
細菌の毒素によって血管が刺激されることで、血管内にプラークと呼ばれる沈殿物が貼りつき、動脈硬化を引き起こします。それが心臓部に起こると、狭心症や心筋梗塞といった重大な全身疾患につながる可能性もあります。
また歯周病の細菌は、糖尿病を悪化させるという報告もされています。歯周病は単なるお口の中のトラブルではなく、全身疾患につながることもある恐ろしい病気なのです。
歯周病治療
歯周病が重度まで進行すると、歯が自然に抜けてしまうこともあります。それだけでなく、歯周病は全身疾患を悪化させることもあります。
歯肉が細菌に感染し、炎症を起こした状態が歯周病です。歯と歯肉の境目にある歯周ポケットと呼ばれる部分に、歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の固まりがつくことで、周囲の歯肉に炎症を引き起こします。
初期の歯周病は、痛みなどの自覚症状がほとんどありません。そのため、気づかないうちに進行してしまいます。
歯周病は、初期のうちなら、歯周ポケットのクリーニングなどの簡単な治療で症状が改善します。しかし重度になると、歯ぐきがやせ衰え、歯を支える骨が溶け出してしまうので、外科手術などの治療が必要となってきます。ですから、歯周病は初期のうちに発見し、早期に治療することが大切なのです。